税務情報

2014.06.19どうなる? 法人成りにおける回収可能性のない債権の引継処理税務情報

[相談]

法人成りを考えていますが、個人事業(消費税課税事業者)において発生した売掛金の一部につき、回収が見込めない金額が500万円あります。
この回収が見込めない金額は、法人成りの際、どのように処理したらいいでしょうか?
また、回収が見込めないかどうかの判断はどのような基準に従うべきでしょうか?
[回答]

回収が見込めない金額500万円については、通常引継がないと考えられます。
回収可能性の低い債権は額面通りの価値があるとは考えられません。
また、回収が見込めない債権を引継いだ場合、資本充実の原則に反すると考えられるからです。

そこで、法人成りの際の処理の方法ですが、以下の2点が考えられます。

1.回収が見込めないと判断できる場合
 貸倒損失の計上により、その損失の生じた日の属する年分の必要経費に算入した上で個人事業を廃業致します。
所法51②においても、「事業の遂行上生じた売掛金等の債権の貸倒れにより生じた損失の金額は、その損失の生じた日の属する年分の必要経費に算入する。」と定められています。
なお、回収が見込めないと判断できた時期が過年分である場合には、その年分に対する更正の請求により処理することになります。

2.回収が見込めないと判断できない場合
貸倒の処理をすることはできませんが、廃業後発生した貸倒損失については、所法63の特例及び所法152条の規定により、貸倒損失発生の翌日から2ヶ月以内に更正の請求をすることによって、当該損失金額を事業廃止した日の属する年分(廃業の年にそれらの所得の収入金額がなかった場合には、収入金額のあった最近の年分)又はその前年分の事業に係る所得金額の計算上、必要経費に算入することができます。

ここで、消費税についてご留意していただきたいのが、次の点となります。

課税事業者が事業を廃止した後において、課税事業者であった課税期間において行った課税資産の譲渡等に係る売掛金等につき貸倒れが生じ、当該課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部を領収できなくなった場合であっても、当該金額については、所法39条第1項(貸倒れに係る消費税額の控除等)の規定の適用はない点です。

次に、回収が見込めないかどうかの判断については以下のような基準を用います。

1.債権に関して次に掲げる事実が発生した場合(所基通51-11)
(イ) 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があったこと。
(ロ) 特別清算に係る協定の認可の決定があったこと。
(ハ) 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられたこと。
A 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
B 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がAに準ずるもの
(ニ) 債務者の債務超過状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し、債務免除額を書面通知したこと

2.法律上債権は存在するがその回収が事実上不可能である場合(所基通51-12)
債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合

3.回収可能な債権が存在する場合で次に掲げる特定の事由が発生した場合
ただし、債務者に対して有する売掛債権(売掛金等)が対象となり、貸付金その他これに準ずる債権を含みません。(所基通51-13)
(イ) 債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時より後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上を経過したこと。
(ロ) 同一地域の債務者について有する売掛債権総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、債務者に対し督促を促したにも係らず弁済が無い場合。
(注)(イ)の取引停止は、継続的取引を行っていた債務者につきその資産状況支払能力等が悪化したため、その後の取引を停止するに至った場合をいいますから、例えば、不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有するその取引に係る売掛債権については、この取扱いの適用はありません。

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