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2016年2月10日より拡充されたキャリアアップ助成金

ここ最近、大都市圏を中心に人材確保が難しくなってきています。そのため、安定的な雇用の確保を狙いとし、契約社員を正社員に転換する、優秀なパートタイマーを期間の定めのない無期雇用に転換するなどの動きが見受けられます。また、国の方でもこのような有期契約労働者を無期雇用労働者に転換していくことを支援しており、キャリアアップ助成金という制度を設けています。2月に、この制度の拡充が行われたことから、この内容について解説しましょう。

1.キャリアアップ助成金とは
 キャリアアップ助成金とは、有期契約労働者のキャリアアップ等を促進するための助成金のことで、6つのコース(正規雇用等転換コース、多様な正社員コース、人材育成コース、処遇改善コース、健康管理コース、短時間労働者の週所定労働時間延長コース)から構成されています。今回、正規雇用等転換コース、多様な正社員コース、人材育成コースの3つで助成金の支給額が拡充されました。そこで、この中からもっとも活用しやすいと思われる正規雇用等転換コースの概要をとり上げます。

2.正規雇用等転換コースとは
 正規雇用等転換コースは、有期契約労働者を正社員に転換したり、無期雇用労働者に転換した場合に、助成金が支給されるものです。今回の拡充により、例えば有期契約労働者を正社員に転換した場合、中小企業では1人当たり60万円が支給されます。これを含めた拡充後の具体的な支給額は以下のとおりとなります。

(1)有期契約労働者を正社員に転換した場合
1人当たり60万円(45万円)
(2)有期契約労働者を無期雇用労働者に転換した場合
1人当たり30万円(22.5万円)
(3) 無期雇用労働者を正社員に転換した場合
1人当たり30万円(22.5万円)

※1 ( )は中小企業以外の額
※2 上記(1)~(3)を合わせて1年度1事業所当たり15人まで、(2)を実施する場合は10人まで

対象となる労働者については、雇用期間が通算して6ヶ月以上の者であり、正社員として雇用することを前提として雇い入れていないこと等の条件が必要となります。なお、(2)の無期雇用に転換する場合は、2013年4月1日以降に締結された雇用契約の期間が3年未満に限られています。

3.具体的な手続き
 この助成金を活用するにあたっては、まず転換を実施する1ヶ月前までにキャリアアップ管理者を配置し、キャリアアップ計画を作成して管轄の労働局長の認定を受けておく必要があります。その上で、転換制度を就業規則等に定め、この転換制度に基づいて転換を行う流れになります。

助成金の支給申請においては、転換された者を6ヶ月以上継続して雇用し、転換後6ヶ月分の賃金を支給した場合に申請できるようになっています。注意点として、この助成金には解雇要件が設けられており、転換日の前日から起算して6ヶ月前の日から1年を経過する日までの間に、雇用保険に加入している従業員を解雇等事業主の都合により離職させていないことが要件になっています。例えば、2016年4月1日に転換した場合、2015年10月1日から2016年9月30日までの1年間に、解雇等事業主の都合により離職させている者がいる場合には支給されません。

2013年4月に改正労働契約法が施行され、有期契約労働者に関して雇用期間が通算5年になると無期転換申込権が発生し、労働者が申込みをすれば有期雇用を無期雇用に転換することになります。この無期転換申込権の多くは、2018年4月以降に発生することになります。そのため、今回の助成金はこの対応を先行して行う企業に対する後押しとなるでしょう。企業としてはこのような助成金を活用しながら検討を進めたいものです。なお、この助成金には細かな要件が設けられていますので、最寄りの労働局へお問い合わせください。

■参考リンク
厚生労働省「キャリアアップ助成金」

 

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