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身寄りのない被相続人「相続人不存在」

[相談]

私は賃貸アパートを経営しています。入居者の1人が亡くなりましたが、身寄りがないようです。なりゆきで、お葬式は私が出しました。未回収の家賃や葬儀費用はどうしたら良いでしょうか。部屋にある手さげ金庫を開けてお金を出しても良いでしょうか。

[回答]

身寄りがなかったということで、相続人がいるかはっきりしませんので、今回のケースは「相続人不存在」に該当します。この場合には、相続開始の時から相続財産は法人となり(民法951条)、家庭裁判所によって選任された相続財産管理人が相続財産を管理し、相続人を捜索し、相続財産を清算する手続きを行うことになります。その中で、あなたは相続債権者として相続財産管理人が管理する相続財産の中から、立て替えていた費用の弁済を受けることができます。勝手に手さげ金庫からお金を出してはいけません。

「相続人不存在」とは、被相続人が死亡して相続が開始したが、相続人がいるのかいないのか明らかでない状態をいいます。明らかでないときとは、以下の場合を指します。

①戸籍上相続人が存在しない場合。
②戸籍上相続人が存在するが、相続人が相続欠格、排除に該当し又は放棄をした場合。
※相続人は存在するが、その所在や生死が不明であったりする場合は、相続人不存在には該当しません。
※相続人が存在しないが、包括受遺者が存在する場合は、相続人のあることが明らかでないときには当たりません(最判平9・9・12)。


相続人不存在による手続きの流れ

①相続財産管理人の選任
相続債権者などの利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所は管理人を選任する(民法952条1項)。

②管理人の公告
家庭裁判所は管理人を選任した旨を掲示や官報で公告する(民法952条2項)。

③相続債権者・受遺者への公告
上記②の公告期間(2ヶ月)経過後、管理人は、いっさいの相続債権者・受遺者に対し請求の申出をするよう公告し、知れたる債権者・受遺者へは各別に債権を申し出るよう通知する(民法957条)。

④相続人捜索への公告
上記③の公告期間(2ヶ月以上)経過後、家庭裁判所は、管理人・検察官の請求により、相続人捜索の公告をする(民法958条)。

⑤特別縁故者への財産分与
上記④の公告期間(6ヶ月以上)経過後、3ヶ月以内に特別縁故者からの請求があれば、相続債権者への清算後、残余すべき相続財産の全部または一部を特別縁故者へ分与できる(民法958条の3)。

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